地方議員ホームページのロングテールなアクセス現象

地方議員のネット活用の主力はSNSになりつつある

ネット選挙解禁以後、まず注目を浴びたのが議員のSNS活用です。日々の活動報告をSNS上で行い、長文記事などは必要に応じて無料ブログでおこなう、そしてホームページはプロフィールのみを掲載しあまりいじらないという形に落ち着いている状況が多い様です。

Facebookは友人絡みにで毎日見る、ブログは何となくもっと大勢の人に読んでもらえるイメージがある、ホームページは更新しにくい、頼むと費用がかかる等の理由で自然とこのような形式に落ち着いているのだと思われます。やはり、効果の見えにくいwebに費用はかけられないということが、無料のSNSサービスに落ち着く主な原因かと思われます。

しかしSNS一本で上手く行くのは一部の有名人、タレント的な知名度のある議員だけです。特に以下の様な問題を解決するのは非常に困難です。

  • 地方議員のフォロワーの少なさ、友人以上に広がらないFacebookの現実
  • 議員の職務内容の報告とSNS上で期待されるコンテンツのミスマッチ感
  • タイムライン形のメディアに日々の活動を蓄積することの問題(過去の物が埋没する)
  • 一社、一プラットフォームに依存する事の問題(Facebookが今後とも主力SNSメディアである保証はありません。TwitterはともかくFacebookの記事が移行できないとしたら大きな問題です)

また配信先がバラバラになることは後述しますが、結果的に損をしています。上手く使い分けてるつもりが本当は届いていないという結果になります。

SNSで情報配信することと、ホームページ(ブログ)で行なう事の違い

流入経路の違い

無料のSNSによる情報配信と、ドメインを取得するなどして、有料で立ち上げたホームページで情報配信を行なう事の違いは閲覧者を誰と想定するか?ということです。友人のつながりからの流入を期待するか、検索からの流入を期待するかの違いです。

Facebook ページは記事が公開されていても、あなたを知らない人がたどり着くことはまずありません。大手ブランドのFacebookページは必ず他媒体での宣伝が前提となって運営されています。また個人ページから「いいね」をしても直接の友人以外の人から参照されることもぼぼありません。

しかし一方の、ホームページにしても、議員のホームページにアクセスがあまりない、やっても無駄という声を聞きます。Facebookは最低でも友人、知り合いからの「いいね」がくるだけマシということの様ですが、このホームページのアクセスがこない原因は

タイトルなどコンテンツの書き方のテクニックの問題
更新情報を検索エンジンに正しく知らせていない仕組みの問題
サイトに多くの人が求める情報がない(プロフィールだけ等)
ということが考えられます。もう一つ「アクセス状況を本人が確認していない」という別の問題があります。(Facebookは「いいね」数を確認しますね)、しかし、この問題は改善努力をすることができます。少なくても、SNS上で「受ける」投稿をしてフォロワー数を得るよりは容易にクリアできます。

ホームページなど検索からの流入は一度「罠」を設置してしまうと、こちらは何もしなくても(向こうが勝手に検索して)流入があります(罠を増やしてく必要はあります)。SNSは一度友人になってしまうと密接な関係をもつ事ができますが、「投稿、返信」「友人申請・承認」すべて人力です。ネット上で新規支援者の開拓をおこないつつ、より深い支援者になってもらうという一連の目的を、SNS一本でカバーしようとするのはあまり効率が良くありません。

期待される発信内容の違い

もうひとつSNSとホームページの違いとして、発信する内容です。この違いは絶対必須というものではありませんが、完全に無視することはできません。

SNSの特徴はタイムライン上に表示されます。常に他コンテンツとの比較の中にあります。身近な友人の近況はもとより、拡散しやすい情報というのは、イベント性のあるもの、ぱっと解り易い写真、ペット、芸能、スポーツ、おもしろネタなどです。実のところ「本人の発信する情報とは無関係な情報」が殆どなのです。

SNSに投稿する以上、このようなものと比較しても、読みたくなる、クリックしたくなる内容であることが要求されます。

一方、ホームページやブログなどの流入では、検索などで、自分で能動的に情報を求めてくる人、もしくは他サイトなどで表示されるタイトルなどをクリックして、自分が欲しい情報を得られると期待してやってくる人です。こちらがある程度、計画、予測できるのが特徴です。

もちろん、地味な地方政治のニュースであっても、自分の地域に直接関わるものです。少しでも皆さんが、興味を引く様に、若い世代にも届く様に、SNSタイムライン上でも”映える”ように努力することは非常に重要です。これはホームページそのもののアクセス向上にも役立ちます。

地方議員のネット活動はホームページを中心にした方が効率が良い

そもそも、現時点でSNSを活用しきれていない議員がいまから、必要に迫られて、しぶしぶSNSを始めたところで、成果は期待できないと言ってしまっても良いかと思います。またセミナー等を受講してまでSNSを学ばなくては理解できないというのであれば、今後ともネット利用が当たり前の世代とは技術的な差が開く一方です。

200人程度の地方議員の皆様に2年間サービスを提供する中で感じた事は、(有名人ではない)地方議員の場合はホームページからの情報配信をメインにし、SNSは補助的に可能な範囲で利用するのが、議員本人にも一番負担が少なく、長続きする方法だと言う事です。

地方議員はプライベートな内容などを投稿しなくても、人々が知りたいと感じる情報を持っているのです。議会の情報そのものは職務に関わるため公開できないものも多々あるでしょうが、行政の情報配信が完全では無い以上、議員がそれを補って伝えるべき内容でアクセスを集めることが出来るものは非常にたくさんあります。

下記で実例を上げ解説いたします。

東京都江東区 白岩忠夫

この議員はネットでの情報配信の重要性に早い時期から注目して、実践している方ですが、年齢的にもテクニック的にもSNSを活用したり、いわゆる「ネット議員」や「ブログ議員」というような指向はもっていません。ホームページにアップしたコンテンツは自動でFacebook ページとTwitterに同期されるだけです。SNSからの流入は日に数件ですが、手間がゼロであるので、現状はこれで良しとしています。今後スマートフォンを購入してSNSにも取り組むということですが、具体的には未知数です。現状は、実直に活動報告をホームページにアップすることのみと考えて良いかと思います。余談ですが議員様ご本人は人差し指一本でキーボードを打っておられます。議員のホームページは効果があるのか無いのか?と言う点においてわかりやすい例だと思います。

11月1日に急に600程度のアクセスが来ました。地方議員でもトップ当選する様な方は「いいね」を毎回1000も2000も集めるようです。また「ブログ議員」、「ネット議員」からすると誤差の様な僅かなアクセス数であるとも言えます。しかし、サイト滞在時間や他の記事の参照情報から、この600は本当にこの記事に興味をもった、議員の活動地域のユーザーだということが解りました。このアクセス数は内容を見ても、目標値として十分ということにします。

(例えば「子育」などのキーワードで流入しても、急病、夜泣き等、単に子育のHow toを求めている場合などは議員サイトへの流入としてはマッチしません。アクセス状況を詳しくみないと本当に有効かどうか判別できない場合があります)

アクセスグラフ

詳しくみてると、今回のこのアクセス増加のきっかけは
亀戸に60階ツインタワー建つ?

という地域開発に関する記事が他サイトに転載されたことによるものです。

(2chスタイルですが、2chではありません。議員本人、関係者ともども掲示板に記事を自分で貼るなどの「スキル」はありません)

亀戸、ツインタワーというタイトルに含まれる地名、キーワード、また本文に含まれる「サンストリート」などの地名が検索にヒットしている事がGoogle アナリスティックからわかりました。

具体的な情報源(ニュースソース)としての活動報告

人気記事

この図はこのサイトのアクセスの多い記事を自動でまとめて表示したものです。同窓会活動、地域のイベント報告、公園整備報告など様々な活動報告をホームページに掲載していますが、人気記事としてアクセスを集めるのはすべて、具体的にPDFの資料などが掲載されている記事です。ホームページでも行政の配布しているPDFを公開している議員は多くいますが、「あまりアクセスがこない」とされています。しかし、適切な形で公開された資料はアクセスを集める人気記事となりうることがこのような形で証明されています。

議員の発信する情報として求められているのは抽象的な「政策」等ではなく、一次情報源としてのニュースです。議員の方向性を知る上で「信念」のようなコンテンツはホームページに必要ですが、アクセスを集める効果はありません。「政策」ページなどにSEOを施している例が見られますが、多くの場合無駄な結果となります。アクセスは公開、検証を繰り返しながら、コンテンツをドメインに蓄積していくことでしか増加は狙えません。

市などのページで同様の情報が公開されていれば、それよりもより深い内容、具体的な内容であれば閲覧者に取ってはより有益です。議員のホームページがあまり閲覧されないのは現状議員サイトが抽象的な政策などのコンテンツのみだからです。このような「想い」や「方針」は検索に引っかかる様なキーワードがそもそも含まれてはいません。皆さんが求めているものは具体的な事実、出来事、一次情報源としてのニュースであることを念頭におきましょう。

また、このような情報源と言う方針でコンテンツを作成している議員にはネット上からの、誹謗中傷的な絡まれ方が少ないという印象があります。数値として証拠をお見せ出来ないのですが、SNSで柔らかい、くだけた投稿をしていると、やはり気安さの故でしょうか、ちょっとした批判的なレスポンスがあります。ニュースソースに徹していると、やはりすべて読んで理解して反論する必要もあるせいか、不快なレスポンスというのはあまりないようです。

また、同時期に投稿されたこちらの記事も転載はありませんでしたが、検索経由からのアクセスを集めています。

旭化成建材・杭データ転用認める(江東区立第二亀戸中)

こちらは、その前に横浜市都筑区のマンションが傾いた問題が全国ニュースになるなっていました。通常このような大きな話題で地方議員がコンテンツを作成しても、もっと大きなサイトがヒットするだけで、地方議員のサイトはヒットしません。安全保障などの問題を地方議員が取り上げてもアクセス増加にはならないのです。しかし、今回のこのニュースは「うちの近所はどうなのか?」という問題を含む話題です。この場合は江東区や学校などの地名での絞り込んで検索されている様子が確認されました。またこちらの記事も資料をアップするなど、一次情報源としての記事の価値があります。

タイトルに地域名を含めることで、全国ニュースでの話題との連動が期待できる

タイトルが命と言えます。

またこのように何か目玉の記事がヒットすると関連して同サイト内の過去の記事も同時期に閲覧され始めます。ヒットした記事への参照が収まっても、暫くは他の記事が閲覧され、アクセスが急には落ちません。トータルでみると、アクセス急増の原因となった記事より、その他の閲覧の合計の方が大きくなります。

アクセスグラフ

詳細はGoogle アナリスティックなどで期間中に参照されたベージなどでわかります。この状況はアマゾンなどのECサイトで見られる、いわゆる「ロングテール現象」と似ています。またこのような現象が起きるのは、自分の求めて情報と訪問したサイトの内容が近いという証明でもあります。

プロフィールや過去の記事が参照されはじめる

ロングテール現象を狙おう。同じドメイン(ホームページ)内にコンテンツを集約

様々なプラットフォームにコンテンツを分散してしまうことはあまり得策ではありません。情報はホームページに集約することが重要です。

上記は大きなアクセスがあった直後の状況ですが、それ以外の時期の流入検索ワードをみると、小数の雑多な地域キーワードでのアクセスが積み重なっている事実が確認できます。一つの語句としては僅かな検索流入ですが、積み重なると大きくなります。

Googleアナリスティックによる、ホームページ流入キーワード

また同議員は過去にも、同じ様にアクセス急増がありました。

江東区ハニービー・プロジェクトの蜂蜜ができました

江東プレミアム商品券30%

地域名やプレミアム商品券などの人気キーワードが含まれているためです。また地域の特産物などは民間の競合のサイトがない場合があります。ニュース等で取り上げられると、アクセスがすべて議員ページに集中します。

地名や固有名詞を適切に入れる事により、定期的にアクセスを増加させる記事を発信することができる

一発ヒットではなく、継続的行なえるということがポイントです。つまり、特にSNSを意識して、プライベートを公開したり、いわゆるバイラルメディアの様な「受け狙い」の記事を掲載しなくても、ご自身の活動報告の延長で一工夫することにより、議員サイトでもアクセスを集める、ネット活用が十分行なえるという事が言えます。

ホームページは知名度拡大への新規開拓、SNSは数が少なくても、既存の支援者への広報活動と割り切っても良いと思います。

また白岩議員は現在のところ、アクセスの多い記事を狙って書いているわけでは無い様ですが、wordpress内に設置してあるプラグインの簡易アクセス統計情報を元に、自分が書いた記事にどれくらいアクセスがあるかを逐一確認し、適切なタイトルや資料のアップロード方法などに気をつけています。

アクセス解析

WordPressには『無料ブログ等のアクセス解析以上、Google アナリスティック未満」の手頃なプラグインが各種あるため利用しやすい。

大手サイトが提供する無料ブログのアクセス解析は総量などはわかりますが、参照元、流入キーワード、などもう少し詳しく知りたいと思った時に足りない部分があると感じます。Googleアナリスティックになると今度は情報量が多すぎて、扱いにくく、つい確認頻度が下がってしまいます。
記事を書こうと思ってログインした時に、ここ数日の人気ページ、リファラ、アクセス量、流入キーワードなどが、一読できる分量で提供されているのが望ましいです。(議員の仕事はネットではありませんので、詳細なアクセス解析などを分析している暇はありません)

  • SNSでの情報配信は現実の友人関係からある程度のアクセスは集めることはできるが、検索にヒットしないためネットでの活動が蓄積されていかない。
  • 議員にしか出せない情報にこそ価値があることを意識する。
  • ホームページを整備することで、自分から情報を求めて検索する様なニーズに答える。
  • 議員本人がアクセス状況を確認したり、人気記事、流入キーワードを確認しながら、より閲覧者のニーズに合わせた情報の提供を心掛ける。
  • タイトルの付け方などにはアクセス増のための簡単なテクニックがある。適切な投稿タイトルの付け方
  • Google search consoleの利用など、検索流入を得る為の最低限の仕組みの整備を行なおう。Google アナリスティックなどの登録

紙媒体での政治活動報告の費用を考えたとき、文面、仕上がりといった印刷コストと同じくらい、何処に配布するか?ということのコストを当然考えると思います。Webも同じです。内容と同様にどんな経路で閲覧者に届くのか?ということを考えましょう。

当たり差し障りの無い日常報告でFacebook上で「いいね」が毎日、20,30くるから何となくSNS活用が出来ている気がする。。。これは間違いではありません。議員の人柄がわかれば信頼度もアップするでしょう。ただし、残念ながらネット利用層というのは、選挙カーがまわってくれば、「がんばってるな」と素直に評価してくれる層とは若干事情が異なります。仕組みの選択で損をする事が無いように、webプラットフォームの特性を考慮して、効果的な情報配信を行ないましょう。

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